「美」
EX周瑜
蒼作
白が蒼にネタ提供し(洗脳とも言う)誕生日プレゼントとして書いてもらったもの
※変人注意
EX周瑜
蒼作
白が蒼にネタ提供し(洗脳とも言う)誕生日プレゼントとして書いてもらったもの
※変人注意
采配をする時も、優雅に美しく。
伸ばした腕は、角度をきっちりと決め、翻す衣服の風になびく方向も計算に入れて。
(よし、美しい――)
腕を掲げた姿のまま、己の美しさを噛み締める周瑜。
周りは、まぁ気にした様子は無い。
采配さえしっかりとしていれば良いのだ。
上にそれ以上を求めても、意味がない所か、ただ疲れるだけである事を彼等は承知している。
戦いが進展する中、自分の美しさを一番に気にしつつ周瑜は戦場を見渡し現状を把握する。
少々自軍は押されているようだった。
実に不本意だが、まぁ相手も中々やるらしい。
「だが、美しく勝つのは我等なわけだが」
ぴしりと美しく決めて、味方に采配を下した後、顎に何気なく指を当てて思案。
(フッ、こんな私も美しい――)
そう思ってからさて、と思考を切り替えて。
(向こうは、今槍が主体。騎兵が復活する前に槍を撃破し……その後、私が美しい犠牲となり時間を稼ぐのが得策と言った所か。後少しで伯符も復活するしな)
ふむと、計算し尽くした角度で頷くと流れる様に腕を上げて敵方向を示す。
「我が隊は前へ!槍兵を撃破する!」
その声で、隊が前に出て矢を放つ。
騎兵よりも歩みが遅い槍兵を見事撃ち破る。しかし、やはりそれにあわせ敵の騎兵が復活した。
一気に駆け来るその姿に、怯える兵もでたが。
「怯むな!何とか保たせろ!」
ばさぁと翻した布は計算通りに広がりを見せた。
(うむ、計算通りだ……)
それがどちらに対してかの感想かは言わずもがなだ。
そして、周瑜の隊が騎兵に突っ込まれた。
何とか一撃でやられぬ様に耐えてみせたが、次はない。
「くっ!ここまでかっ!」
(だが!!倒れ伏す時もっ、否!倒れ伏す時ですら!美しく!!)
ゴッ――
騎兵が突撃してきた衝撃が走った。
少し、吹き飛ばされる。
衝撃を殺しつつ美しく、一度ターン。布の広がり具合も計算するのを忘れない。
そして、一歩、二歩下がり、爪先は真正面でなく少し斜めに。これを間違えてはいけない。そこに美しさがあるのだから。
それから、ぐらりと身体を傾ぎ、そこで血を吐く。
血を飛ばす方向はなるべく下方。服を少し血で汚さねば、美しさが際立だない。
血が服と地面を汚してから、傾いだ身体をゆっくりと崩して行く。
角度をきちんと正ながら、美しく、流れる様に、指の先、爪の先までにも神経を行き渡らせて、服すらも己の意のままに。
天へと手を伸ばし、閉じそうな瞳でその天を見て。
ド サ ―― ッ
やや斜めから地面へと倒れる。
そこで上がる土埃は派手すぎず、だが少なすぎても駄目だ。
次いでゆっくりと天に向けていた腕を落として行き頭の上辺りで一度跳ねさせ、ここだ!このタイミングで声を。
「――く―ぅ―」
掠れた声でなければならない。そして声を発しながら跳ねさせた腕で胸を軽く撫でてから脇へと移動させ。
「――――ぁ――」
もう一度声をだす。この声は重要だ。
最後に、首を軽く動かし斜めに頭を置いてから、口から流れ落ちる血を気合と思いで意のままに操って、一番美しい位置へ流し、倒れ落ちた身体の角度具合位置を瞬時に把握し微調整。
( 完 璧 だ――)
仕上げに。
「は、く―ふ―――」
「公瑾ーーーっ!!!」
小さく零した彼の名の後に戦場に響いた孫策の叫び。
(ナイスタイミングだ、伯符)
うっすらと開いた瞳を静かに閉じて。
(あぁ。美―しい――)
意識を手放した。
その後、隊の兵達がなるべく美しいまま周瑜を自城へと運び込み、その周瑜の最初の計算通り戦は、周瑜の時間稼ぎ後に復活を果たした孫策が戦場を蹂躙し、見事勝ち戦となったのだった。
「ふむ。左腕の動きは少し多目の方が美しかったか」
復活した周瑜の第一声はそれだったとか。
PR
この記事にコメントする