「縁日」
曹操+夏候惇+夏候淵
従兄弟で縁日のお話(7月書き下ろしのパロ)
蒼作
曹操+夏候惇+夏候淵
従兄弟で縁日のお話(7月書き下ろしのパロ)
蒼作
賑わいが広がる夜の町。
一時の平和と楽しみを求めて人が集い騒ぐ。
そんな人混みと喧騒に紛れ、今宵は彼等も楽しみを求めてこの祭の中に訪れていた。
「いやぁ、色んな屋台があるな」
夏候淵が、のんびりと周囲を見回しながら連れの二人へと話し掛ける。
「うむ」
夏候惇は静かに頷いて小さく微笑んだ。この祭の空気が気に入ったらしい。
「人々の顔に笑顔と言うのは悪くないな。開催して良かったかもしれん」
曹操が満足そうに笑みを浮かべた。
三人は浴衣に団扇と、普段の気配を消し町人に溶け込んでいる。
と夏候淵が、ちょっと待ってろと言い残し人混みに消えた。
「淵!ぬぅ、止めるまもなく行ってしまった……」
夏候惇が眉間にしわを寄せるが、曹操は気にした風もなく少し道の脇へと体を避けた。夏候惇もそれに続く。
「折角の祭だ。楽しんでなんぼだろ」
くくっと曹操が喉を鳴らす。
それでも、夏候惇はまだ不満があるらしく表情はあまり変わらない、曹操はそんな夏候惇にもう一度声を掛ける。
「別にはぐれはしないだろ。何処に居たってお前達は俺を見つける。そうだろ?」
そう言って曹操は、パンパンと夏候惇の肩を叩きながら人混みに視線を向けると、夏候淵が此方へと向かってくる姿が視界に入る。
「うむ、まぁそうだが……」
「ほら、戻って来たぞ」
上手く丸め込まれた夏候惇の視線が上がり、夏候淵を見やる。
曹操も軽く手を挙げた。
「孟徳、惇っ!ほら、美味そうだろチョコバナナ」
得意気に夏候淵は人数分買ってきたチョコバナナを二人の目の前に掲げる。
掲げられたチョコバナナは、チョコ色と青とピンクのコーティングがされている。
「そうだな、美味そうだ。一本貰うぞ」
曹操がピンクのチョコバナナを取って一口食べる。
その後、夏候惇も仕方ないなと苦笑してから青のチョコバナナを。
夏候淵は楽しげに笑いながら、チョコ色のそれにかぶりついた。
暫く三人は、歩きながら他愛のない会話を交わし、夏候淵が時折買ってくる食べ物を食べながら歩いた。
そんな途中、曹操がふと足を止めて一つの屋台を見下ろす。
「どうした、孟徳」
「おっ、金魚すくいだな」
夏候惇と夏候淵も足を止め、曹操の後ろから屋台を覗く。
屋台の水槽には、赤い金魚と黒い金魚が泳ぎ回っている。
「どうだ、二人とも。勝負をしないか?」
曹操が不適に笑う。
「誰が一番すくえるかだな?」
夏候惇がニヤリと。
「いやいや、大きさも勝負の対象だな」
今度は夏候淵が。
三人は視線を交わし合い頷き。
『オヤジ、一回!』
声をそろえて言い放つ。
「ぬぅっ!何故だ!?」
三人はまた一緒に歩いていた。
そんな中夏候淵は、ぶつくさと文句を言っている。
先の金魚すくいの勝敗は、勝者曹操。二番に夏候惇、敗者が夏候淵だった、そのせいだろう。勝敗を決したのは、夏候淵は大きさ勝負で大きな金魚を狙いすぎ早々と紙を破ってしまった事。夏候惇は逆に数勝負で小さいのばかり狙ってしまった事。そして、曹操は大きな金魚も小さな金魚も取りやすいものから狙ったのがこの結果をもたらしたらしい。
「俺に勝つにはまだまだらしいな」
フフンと笑いながら曹操は夏候淵が持つ金魚を見た。
三人ですくった中から三匹程選んで貰ってきたものだ。
「くそう!次だ次!今度は負けん!」
夏候淵はぐっと拳を握り絞める。
「では、次はあれなんてどうだ?」
静かに夏候惇が指差したのは射的の屋台。
三人は視線を交わし頷くと、足早に射的へと向かい歩いて行くのだった。
後にこの三人は屋台荒らしと恐れられたとかられなかったとか――。
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