大神×ロベリア
お風呂のお話
蒼作
「男の意地を?」
風呂。
広い風呂。湯気が視界を遮り、湯が程よく熱い。
誰も居らず、それを独り占め。
大神は、盛大に脚を伸ばし背伸びをした。
「あー、これを極楽と言うんだろうなぁ」
温まった身体がほんのりと赤く染まり、火照った頬はどこか男であれど艶めかしい。
「皆が起きてる時間じゃこうはいかないからなぁ」
ふはぁと溜め息を吐いて、思い出したくない事が頭を廻る。
「うあー、ダメだダメだっ!」
情けない思い出に頭を抱えて小さく叫んでから大神はざぶんと湯に潜り込む。
「ぷはっ!うん、明日も頑張ろうっ」
ぐっと拳を握りしめ、湯から上がろうと立ち上がる。
と、スルリと首に柔らかい何かが巻き付き、耳元で囁かれた。
「何を、頑張るんだって?」
声と、背に押し付けられた感触に、大神の顔はかぁっと赤くなって一瞬硬直する。
「うおぁあっ!?」
叫びが硬直を解きそれが風呂場に響き渡り、大神は絡み付く腕を無理矢理引き離して、湯へと飛び込んだ。
「ロっ!ロベリアぁ!!」
「いよぅ」
大神のそんな反応を大いに楽しんで笑うロベリアを大神は恨めしそうに睨んだ。
だが、顔を赤くして何時もの逆立った髪も湯の所為か垂れていて、下から睨み上げるその姿に凄みは全然無く。
ロベリアはじとーとそんな大神を見下した後、湯へと身体を沈める。
「アンタ。今、そこらのヘタな女子供より可愛くなってるよ?」
くくっと笑いながら、ロベリアは大神へとすり寄って行く。
「ちょっ、ロっ!ロベリア!!ホントっ、勘弁してくれぇ!!」
口元を覆い隠し、必死にそっぽを向くが顔は真っ赤な大神。
「そう言えば、止めて貰えると思ってんのがまぁ、アンタらしいって言うか」
妖艶に微笑みながら、ロベリアの指先が大神の胸をなぞり、撫でる。
「やっぱり流石、隊長だけあってしっかりした胸板してるよねぇ」
ほんのり赤くなったロベリアの指先が胸から流れ首を伝い顎に触れる。
「~~~~っ!!!」
「と、言うか。男だね」
囁いてから、ロベリアは大神の唇を奪う。
長い口づけの後、大神はがばりと立ち上がると、無言で走り去った。
「……………やりすぎたか?」
がしがしと頭を掻いて、大神が去ってしまった方を見た丁度その時、がしゃーん、がらんっ、どーん!と盛大な音が。
「やりすぎたか」
くっくっくっと、可笑しすぎて肩を震わせるロベリア。
後で責任取ってやらないとなと思いながら、もう少しこの湯を楽しんだ。
大神はというと、何とか服を纏ってロベリアが責任取りにくるまで寒空のしたで精神統一をしていたとか。