忍者ブログ
Admin*Write*Comment
小説棚
[79]  [78]  [77]  [76]  [75]  [74]  [73]  [72]  [71]  [70]  [69
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「赤月」
大神

追悼のお話
しんみり系

蒼作

「赤月」

 

 

今日は何時も以上に真面目に仕事をしてきびきびと生活をする。

そして、夜までに仕事と用事を終わらせ、申し訳ないが皆からのお願いも夜まで掛かってしまうのは断った。

それから、夜の見回りも今日は早目に終わらせる。ただ、その途中わざわざ皆の部屋に立ち寄って一言声を掛けた。部屋に居ない者は見回りをしながら建物内を探し、やはり一言声を掛けた。

部屋に戻れば一度室内を見回し、電気もつけず窓際へと歩み夜だと言うのにカーテンを開け窓を開け。

空。

月が浮かんでいるのを確かめてから椅子へ腰を下ろした。

暫くじっと動かずに静寂に包まれる。

不意に思い出したかのように動きだせば、鍵の掛かっている引き出しを開けた。

取り出すのは、煙草一箱。マッチ。灰皿。そして、一丁の拳銃。

コトリ――と静かな室内に拳銃を置く音が嫌に響いた。

煙草を一本引き抜き、口にくわえた。マッチの火を着け、くわえている煙草にその火を移した。

紫煙を深く吸い込み、肺を煙で満たす。

ゆっくり、静かに吐いた。

苦い味。

瞳の奥に揺れる普段誰にも見せる事の無い感情。

それが、大神一郎の追悼の仕方だった。

仕事を理由にその日、皆が向かう墓参りに着いても行かず。次の日に行くと嘘を付いて、決して墓を参る事はしない。

ただ、独り。

その日の夜にこうして過ごし、時計の針が次の日を示すその瞬間に煙草の火を消した。

それから朝まで月と拳銃を眺めた。

眠れない理由を眠らない理由に変えて。

 

あの日以来、赤い月は見ない―――。

 

       

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メール
URL
コメント
文字色
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
  • ABOUT
小説置場 サクラ大戦・三国志大戦の二次創作
  • カレンダー
06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
  • 最新記事
  • 最古記事
(11/12)
(11/12)
(11/12)
(11/12)
(11/12)
  • フリーエリア
  • ブログ内検索
  • プロフィール
HN:
団子三姉妹:白、蒼、黄緑
HP:
性別:
非公開
自己紹介:
投稿は主に白です。作成は、蒼と黄緑が担当。
  • バーコード
Copyright © 小説棚 All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]