「時に求める者は」
大神+ロベリア
06雨のお題
蒼作
大神+ロベリア
06雨のお題
蒼作
「時に求める者は」
「じゃぁな」
ひらっと後ろ手に手を振る。
雨が、ぽつりぽつりと降ってきた中。
「傘は?」
慌てて声を掛けたが、ロベリアは要らないと背だけで語る。
「濡れるぞ」
全くと苦笑いして溜息を吐く。
徐々に強くなってくる雨の向こうに消えて行く姿を暫く見つめた後。
傘が無く慌てて走っている少年と少女の脚を止めた。
「これ、使うといい」
微笑んで、そっと手にしていた一本の傘を渡した。
お兄ちゃんは?と聞かれたが、良いんだと首を振りさぁ早くお帰りと促した。
ありがとうと言って歩いて行く少年と少女を見送り、大神は空を振り仰いだ。
雨が頬を叩く。
たまには、彼女の様に濡れて行くのも構わないか、と笑って。
そうして、踵を返しロベリアが去ったのとは反対方向へと歩き出す。
雨は益々強くなってくる――。
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