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「時には彼も…」
大神

お疲れモードのお話

蒼作

「時には彼も…」

 

 

吐き出した紫煙が澄んだ闇の空へと昇って行く。

風にたなびく開け放たれた窓のカーテン。

机の上に広げられたままの読み掛けの資料。

人工の明かりに照らし出されている室内。

ふと、なにもかもに嫌気がさして逃げた先は苦い煙草の味。

肺にまで煙を吸い込み、吐き出す。そんな行為を繰り返して、吸った本数はいつの間にか三本。

息苦しい気がして律義に結んだままのネクタイを乱暴に緩めた。

煙草の長さが短くなった。灯っていたオレンジの明かりを灰皿に押し付け揉み消す。

小さく息を吐いてから窓辺を離れた。

深々と腰を下ろせば、ギシリと椅子が鳴いた。机の上の資料に目をやったが、まだ読む気にはならない。

小さく息を吐いて、暫く天井を見上げた。

と、ノック音が聞こえた。何時もなら煙草を吸った後故、寝たふりをしてごまかしていたのだがやはり今日は調子が悪いのか、思わず返事をしてしまう。

「はい」

そして、それにすら気付かずにドアを開けてしまった。その事に気付いたのが、部屋を訪ねてきた彼女が怪訝な表情をしてから。

言い訳をする前に、彼女に煙草かと指摘されてしまった。

もともと、嘘を付くのが苦手な為、それ以上の言い訳も出来ずに、皆には黙っていてくれと言うのが精一杯だった。

だが、彼女は嫌な顔をする所か笑ってそれを承諾してくれた。

大神は、安堵と共に苦笑いをするしかなかったが。

それから、用はなんなのか訪ねてみるも疲れているようなので、今度でいいと言われてしまった。

大丈夫だと、少し食いついてみたが、急ぎの用でもないしと結局逃げられてしまう。

そして、それ以上の追求は諦めた。彼女の言うように疲れていたのだろう。でなければこんな失態もおかさない。

彼女が去ってから、窓辺の煙草を片付け、資料を整えベッドに入った。

窓は少々寒いが開け放ったまま。煙草の匂いを消す為に。

身体に付いてしまった匂いは、朝の修練で汗を流すのと一緒に消してしまうことにしている。

服に付いた匂いは、汗を流した後洗濯で。

ズシリと重い身体。自然と瞼が落ちてくる。でも、思考は今日読み切れなかった資料の片付けが明日に回ってしまって大変だとか、そんな事を思って。

そんな自分らしい思考に戻った事にも気付かずに、大神一郎は眠りに落ちた。

 

彼も人の子。たまにはこんな事もある。

 

       

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