「愛すべき彼」
R孫策(虎)×UC大喬
蒼作
R孫策(虎)×UC大喬
蒼作
ヒュォ――
風を切って、木刀が走る。
その一撃を何とか凌ものの、息を整えている暇はない。直ぐに次の一撃が、予想もつかない場所から襲ってくるのだ。
「――くぁっ!?」
――カァン!!
木刀が何度も何度も打ち合わされる。
否、打ち合わさせてもらっているのだ。
2人の間にはそれだけの実力差があった。
「権!隙だらけだぞ!」
手加減された孫策からの最後の一刀が、腹部へと吸い込まれるように綺麗に決まり、孫権は膝から崩れ落ちる。
「―っく!?ぁぅ――ッハァハァ……ハァ…」
動きが止まれば、思い出したかのようにどっと汗が吹き出してくる。
孫権の呼吸は乱れたまま。
「相変わらずだなぁ、これだけで根を上げるのか?」
ニカリと不適に笑う孫策に孫権は恨めしそうな視線を向ける。
「そ……そんな、事言ったって……」
起き上がる力すら使い果たしてどうにもこうにも。
まだ、孫権を立ち上がらせようと孫策が口を開こうとした所に横槍が入った。
「伯符様、いい加減お休みになっては如何ですか?いくら何でもやりすぎですよ?」
やんわりとした口調に鈴の音のような声。
何時の間にか大喬が其処に居た。
「大喬…でも――」
「伯符様。加減も必要ですよ?」
別に怒っている訳でも、諭している訳でもない。
ただ、大喬がその時感じた思いを口にしているだけ。
けれど、孫策は言い返せなくなってしまう。どうにもこうにも大喬へは甘くなってしまうのだ。
そんな風に、孫策ががしがしと頭を掻いていると、大喬は孫権の傍らにしゃがんで持ってきた手拭いで孫権の汗を拭いつつ怪我の具合を確かめている。
「だ、大丈夫ですから!?」
「でも、此処に傷が……」
孫策はそんな2人を面白く無さそうに見つめて、ふいとそっぽを向いた。
空を見上げるが、会話が耳に聞こえてくる。
「すみません、義姉上」
「お気になさりませぬよう」
いい加減我慢の限界。
ギンっと孫策は孫権を睨み。
「権!きりっつ!!」
大きな声で声を掛ける。
「は、ははいっ!?」
孫権はその声でがばっと起き上がりびしりと起立。
「今日の鍛錬は此処まで!怪我の手当てをとっとと自分でやって部屋に戻れ!!」
最後にずびしと木刀の切っ先で邸を示す。
「はいぃっ!」
孫権は孫策の睨みつけてくる視線が怖かったのか、自分の木刀を抱えて転がるようにたたらを踏みながらも一目散に邸へと走って行った。
それを確認して、孫策はむすりと頷く。
「伯符様」
ゆっくりと立ち上がる大喬の背中が少し怖かった。ちょっと怒っている気がする。
「う、その、わ…悪かった」
しゅんと肩を落とす。
今のはただの嫉妬だ。孫権が大喬に構ってもらっているのが気に食わなかったのだ。
仕方ないじゃないかとは言えず、大人しく謝ってしまう。
「………」
そんな孫策に、大喬はゆっくりと歩み寄って微笑んだ。
「伯符様の弟君だから、大切な人なのですよ?」
孫策の子供のような嫉妬に気付いて、大喬は言う。
新たに取り出した手拭いで、孫策の頬を拭った。
「大喬……」
「はい」
にっこりと微笑む大喬につられて、孫策も何時ものように、ニカリと笑う。
「今度からはもっと加減する。別に権をイジメたい訳じゃ無いからな」
頬を軽く掻いて、かくりと頭を垂れた。
「はい、そうして下さいませ。大切な弟君なのでしょう」
クスリと笑う大喬に苦笑いを向けて。
「んじゃ、俺達も上がるか」
「ええ、温かいお茶を用意致しますね」
そうして、2人は歩を合わせ歩き出す。
孫権に謝った方がいいかなとか、愛する弟を話題にして――。
風を切って、木刀が走る。
その一撃を何とか凌ものの、息を整えている暇はない。直ぐに次の一撃が、予想もつかない場所から襲ってくるのだ。
「――くぁっ!?」
――カァン!!
木刀が何度も何度も打ち合わされる。
否、打ち合わさせてもらっているのだ。
2人の間にはそれだけの実力差があった。
「権!隙だらけだぞ!」
手加減された孫策からの最後の一刀が、腹部へと吸い込まれるように綺麗に決まり、孫権は膝から崩れ落ちる。
「―っく!?ぁぅ――ッハァハァ……ハァ…」
動きが止まれば、思い出したかのようにどっと汗が吹き出してくる。
孫権の呼吸は乱れたまま。
「相変わらずだなぁ、これだけで根を上げるのか?」
ニカリと不適に笑う孫策に孫権は恨めしそうな視線を向ける。
「そ……そんな、事言ったって……」
起き上がる力すら使い果たしてどうにもこうにも。
まだ、孫権を立ち上がらせようと孫策が口を開こうとした所に横槍が入った。
「伯符様、いい加減お休みになっては如何ですか?いくら何でもやりすぎですよ?」
やんわりとした口調に鈴の音のような声。
何時の間にか大喬が其処に居た。
「大喬…でも――」
「伯符様。加減も必要ですよ?」
別に怒っている訳でも、諭している訳でもない。
ただ、大喬がその時感じた思いを口にしているだけ。
けれど、孫策は言い返せなくなってしまう。どうにもこうにも大喬へは甘くなってしまうのだ。
そんな風に、孫策ががしがしと頭を掻いていると、大喬は孫権の傍らにしゃがんで持ってきた手拭いで孫権の汗を拭いつつ怪我の具合を確かめている。
「だ、大丈夫ですから!?」
「でも、此処に傷が……」
孫策はそんな2人を面白く無さそうに見つめて、ふいとそっぽを向いた。
空を見上げるが、会話が耳に聞こえてくる。
「すみません、義姉上」
「お気になさりませぬよう」
いい加減我慢の限界。
ギンっと孫策は孫権を睨み。
「権!きりっつ!!」
大きな声で声を掛ける。
「は、ははいっ!?」
孫権はその声でがばっと起き上がりびしりと起立。
「今日の鍛錬は此処まで!怪我の手当てをとっとと自分でやって部屋に戻れ!!」
最後にずびしと木刀の切っ先で邸を示す。
「はいぃっ!」
孫権は孫策の睨みつけてくる視線が怖かったのか、自分の木刀を抱えて転がるようにたたらを踏みながらも一目散に邸へと走って行った。
それを確認して、孫策はむすりと頷く。
「伯符様」
ゆっくりと立ち上がる大喬の背中が少し怖かった。ちょっと怒っている気がする。
「う、その、わ…悪かった」
しゅんと肩を落とす。
今のはただの嫉妬だ。孫権が大喬に構ってもらっているのが気に食わなかったのだ。
仕方ないじゃないかとは言えず、大人しく謝ってしまう。
「………」
そんな孫策に、大喬はゆっくりと歩み寄って微笑んだ。
「伯符様の弟君だから、大切な人なのですよ?」
孫策の子供のような嫉妬に気付いて、大喬は言う。
新たに取り出した手拭いで、孫策の頬を拭った。
「大喬……」
「はい」
にっこりと微笑む大喬につられて、孫策も何時ものように、ニカリと笑う。
「今度からはもっと加減する。別に権をイジメたい訳じゃ無いからな」
頬を軽く掻いて、かくりと頭を垂れた。
「はい、そうして下さいませ。大切な弟君なのでしょう」
クスリと笑う大喬に苦笑いを向けて。
「んじゃ、俺達も上がるか」
「ええ、温かいお茶を用意致しますね」
そうして、2人は歩を合わせ歩き出す。
孫権に謝った方がいいかなとか、愛する弟を話題にして――。
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