「桜酒」
義兄弟(孫策+周瑜)
蒼作
桜と言えばお花見ですよね。
義兄弟(孫策+周瑜)
蒼作
桜と言えばお花見ですよね。
酒瓶を一本抱え、周瑜を共ない庭に出た。
広い庭の隅、邸からは見えない場所に一本の桜の木と四阿が在った。
其処で、静かに酒を酌み交わす。
「相変わらず、此処の桜は見事だな」
くくっと喉を鳴らして孫策は笑う。
周瑜はそうだなと、薄く笑う。
「邸から見えないのが残念だな」
周瑜が桜を見上げた。
月明かりの下、桜色がひらひらと舞い落ちる。
一枚。杯に浮いた。
「ま、そのおかげでお前と隠れて酒が飲めるんだけどな」
お、いいなと周瑜の杯を見て自分もと舞い落ちる桜を杯を掲げて追い始める孫策。
そんな孫策を可笑しそうに見やり、周瑜は桜の花弁ごと酒を飲み干した。
「っと――、なかなか入らねぇな」
残念そうに花弁が入らなかった杯を眺め、諦めてその酒を飲み干す。
それを見ていた周瑜が酒瓶を持ち上げ、孫策の杯に酒を注ぐ。それから自分の杯へも。
「なぁ、公瑾」
ちびりと唇を酒で濡らした後、孫策は空を見上げた。
桜の木越しに見える月が綺麗だった。
「………」
周瑜は先を促さず静かに待つ。くいっと酒を飲みへして手酌でもう一杯。
「俺達なら、この国を変えられるよな?」
酒を飲み干した、注いでくれと無言で杯を周瑜へ差し出す。
「弱気だな。伯符、お前らしくない」
酒を注ぐ。
酒の水面が揺れる。
「……――っは」
孫策が顔を落としたかと思えば、がばりと四阿の天井を振り仰いだ。
「くははっ!そうだな、そうだ。俺らしくねぇ」
ぐいっと酒を飲み下す。
喉が一瞬焼けた。
この熱さがなければ俺らしくない。
「公瑾!俺はやるぜ!だから、共に来いっ」
拳を突き出す。
「愚問だな、伯符」
こつりと、孫策の拳に己の拳をぶつける。
2人は笑いあった。
そしてまた、酒を酌み交わす。それは、知らずと誓いの酒となる――。
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