05[ねえ。その痛みはやっぱり、くるしいですか？]

05[ねえ。その痛みはやっぱり、くるしいですか？]
米田

蒼作

支配人室。
窓から入り来る夕日を肴に酒を呑む男の姿。
酒瓶から中身をグラスに移し、ゆっくりとそして静かに酒を呑む。
室内には、時々だが聞こえてくる花組の皆の楽しげな声がうっすらと届く。また、中庭辺りで何かをやっているのだろう。騒がしい娘達だ。
そうして、米田は嬉しそうに小さく笑った。
残り少なくなったグラスの酒を呑み干し、また酒を注ぐ。独りでそんな事をしていると、何時しか自然と視線が机の上に在る一枚の写真へと。
「なんでぃ、いいじゃねぇか。こんな風に酒呑んだってよぉ」
苦笑して写真に写る者達へ文句を言う。
「平和ってのは良いもんだな。お前ぇ達とも、こうやってゆっくり酒を酌み交わしたかったぜ？」
口の端しを吊り上げ笑う。椅子を回して、窓の外へと視線を変えた。
グラスを持ち、軽く掲げる。ゆらりと一揺らし。
そして、一気に呑み干した。外から、また喧騒がうっすら聞こえてくる。
「まったく、美味ぇ酒だぜ」
そうしてまた、米田は笑う。




[ねえ。その痛みはやっぱり、くるしいですか？]