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「紫煙の影に‏」
ご夫人

切ないお話
紫煙シリーズ①

蒼作

「紫煙の影に‏」



「お袋。…親父、逝っちまったな」
月の輝く闇夜。
月明かりに照らされた庭は仄暗い。
「そうさね――」
吐き出された紫煙が天へと昇って行く。
露台。
其処も室内の明かりが無いので、庭の様に仄暗かった。
そんな場所に、孫策と呉夫人の姿が在る。
「色んな事やり残してよ…」
孫策は露台の手摺に凭れて闇夜に浮かぶ月を眺めた。
「虎の名が聞いて呆れやがる」
孫策は、ハンッと笑った。
そんな孫策を余所に母―呉夫人は、相変わらず煙管を静かに燻らせて居る。
「馬鹿だぜ、本当に馬鹿だ」
ぐっと、身を起こし孫策は手摺から離れ呉夫人を見やる。
「お袋は、何も言わねえんだな。泣きもしねぇ…」
その言葉に責めはなかった。寧ろ、労る優しげな声音。
呉夫人は、また紫煙を吐いた。
孫策は苦笑し、歩き出す。
「すまねぇ、お袋。邪魔したな」
そっと、呉夫人の側を通り過ぎる孫策に、そこで初めて呉夫人が声を掛けた。
「策。アンタは、あたしより早く逝くんじゃないよ」
顔も向けず、呉夫人はまた紫煙を吐く。
振り返った孫策の瞳に映る母は、煙管に口を付けたまま天を見上げてた。
「……っへ。当たり前だろ、誰がお袋より早く逝くかよ」
笑って、そして孫策は室内へと消えた。
泣きもせず、怒りもせず。ただ静かに煙管を燻らせ天を見上げる。あれが、母の父への弔いの仕方なのだろうと思いながら。「―――。馬鹿だねぇ」
天へと零す。
「本当に、馬鹿。あたし等を置いて逝くだなんて、ね」
吐き出した紫煙が天へと昇って行く。
呉夫人は、静かに天を見上げていた。
夜が明けるまでずっと。

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