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「食べさせてくれるまで」
新次郎+昴+リカ

ホットケーキのお話

蒼作

「食べさせてくれるまで」

 

 


「うううう~。リカ、お腹空いたぁ~」

リカが、新次郎と昴が仕事をしている机に突っ伏したのは、もう夜も遅い時間。

仕事がなければ見回りも終えてしまっているだろう頃合い。

「だから、リカ。今日は諦めた方がいいって言ったじゃないか」

新次郎が、文字を書き込んでいた書類から顔を上げ、リカを見下ろした。

「う~、やだ~。今日はしんじろーのとこにお泊りする~」

ぐりぐりと机に額を押し当てながら、リカが駄々をこねる。

「昴は言った。こんな遅い時間に帰すのも心配だろう、と。仕事の方も後少し。リカ、もう少しだけ大人しく待っててくれないかい?」

こちらは、書類から顔を上げることも無く、昴は新次郎とリカに言って聞かせた。

今日、突然だったがリカが新次郎の家に泊りたいと言い出した。新次郎は断る理由もなかったので、快くそれを承諾した。だから、早めに仕事を終わらせ、一緒に帰ろうと思っていたのだが、帰り際。サニーサイドに大量の仕事を押し付けられてしまったのだ。リカには申し訳ないが、あまりの仕事の量、今日中に終わらせられるかも解らなかった為、お泊りは明日にしようとリカに言ってはみたものの、絶対泊まるのだと言い張ってきかず困っている所に昴が救いの手を差し延べてくれた。

「昴は提案する。二人でやれば早目に終わらせられるだろう、と。リカの為だ手伝ってあげるよ」

と。

それから時間は流れ、今に至る。元気一杯のリカが珍しく大人しく待っていたが、そろそろ限界のようだ。いや、これだけの時間大人しく待っていたのだから凄い事だ。よっぽどお泊りを楽しみにしているのだろう。

「リカ、もうがまんしない。ノコおいで。今日でお別れだな元気でな」

「うきゅっ!?」

ノコを抱え上げ、リカが悲しげにノコへお別れを告げる。リカのお腹がぐ~と鳴った。

「よし、少し休憩しよう。リカ、ホットケーキを作ってあげるよ」

ガタリと素早く立ち上がった昴は、微笑んでリカへと手を伸ばした。

「そっ、そうですね!ほら、リカっ!ホットミルクも作ってあげるよ!」

新次郎も慌てて立ち上がり昴と同じ様にリカへと手を伸ばす。

「ほんとかっ!?リカ、パパのホットケーキがいい!ほら、いっくぞー!」

リカは満面の笑みを浮かべ、昴と新次郎の伸ばされた手を掴むと駆け出した。

「リ、リカっ」

「わひゃあっ!?」

そんなリカの足に合わせ新次郎と昴も慌てて駆け出していった。

ドリンクバーに着くと、それじゃあと早速料理に取り掛かる。昴が林檎を切って、新次郎がホットケーキの生地を作る。

「リカっ、リカなあっ、甘いのが食べたい。あの白いのっ、生クリーム!」

リカが、料理をする二人を見ながら、今か今かと待っている。ついでに、リクエストも忘れない。

「わかったよ、じゃあ…」

「あっ、僕が作りますよ。生クリームって結構力いりますし」

昴が新しく取り出したボールを新次郎が受け取る。その代わりに、新次郎が持っていた生地の入ったボールを昴が受け取った。

「じゃあ、僕が生地を焼こう。そっちは頼んだよ」

そうして、生地に林檎を入れてフライパンを温め始めた。

カシャカシャ。ジュー。

暫くは調理の音だけが響く。リカも身体を嬉しそうに揺らしながらも大人しく待っていた。

「生クリーム出来ましたよ」

「こっちも焼けたよ」

「うっひょ~!出来たか出来たんだな!?」

二人の完成の言葉を合図に、大人しくしていたリカが嬉しそうに踊り出した。

昴がホットケーキを皿へ盛る。新次郎がその皿に生クリームを乗せた。

「完成ですねっ!」

新次郎が嬉しそうに笑ってリカを呼ぶ。

踊っていたリカが凄い速さで戻って来て皿を受け取ると、落とさないようにねと、新次郎はリカに声を掛けた。

「さて、後はホットミルクか…」

と、昴は新次郎の顔を見て止まった。

「ん?何ですか?」

笑顔のまま、自分の顔を見て止まっている昴を小首を傾げて新次郎は見下ろす。

じっと見られてるのは頬の辺りか。

「新次郎」

唐突に名前を呼ばれて、えっ?と頬を朱くした瞬間、ネクタイを掴まれた。

「わひゃあっ!?」

ペロリ。

ネクタイを掴まれ引っ張られ、前屈みになった所で頬を昴に舐められた。

「なっ!なっ!ななっ!?」

今度は顔を真っ赤にして、舐められた頬を押さえながら昴に何かを言おうとする新次郎だが、驚きの余り言葉が一切出て来ない。

そんな新次郎を見て、昴は不適に笑い扇を開いた。

「ご馳走様。クリーム、付いていたよ」

そう言い捨ててしまえば、とっとと、ミルクを作りに行ってしまう。

新次郎は口をパクパクさせながらそんな昴の背中を見遣る事しか出来なかった。

と、はっ!と気付いて、慌ててリカを見る。

「いっただっきまぁす!!」

どうやら、ホットケーキに夢中でこちらを見てはいなかったようだ。新次郎は大きく息を吐いて安堵する。そして、暫くそうしていたら、

「キミは何時までそうしているつもりだい?」

と、そんな新次郎の横を通り抜けつつ、昴が言った。

それに驚いて、ビクリと新次郎は背筋を伸ばす。

「うっまーい!しんじろー、すばるっ!お前達も食ってみろっ。うっまいぞーぉ」

「だってさ。ほら、大河の分もミルクを作ったからおいで」

ホットケーキを本当に美味しそうに食べるリカと、そんなリカの隣の席にゆっくりと腰を降ろす昴を見て、何だか嬉しい気分になって顔が緩み微笑む新次郎。

「今行きます!」

さっき昴にされた事も忘れ、急いでリカの隣の席に座った。

「ほら」

「有難うございますっ」

ミルクを受け取り一口啜る。暖かくて甘い味が口の中に広がった。まるで、今の気持ちのようだと、新次郎は思う。

リカがほらほらとホットケーキを勧めてきた。リカの為に焼いたホットケーキだが、お言葉に甘えて一口。

「うん!美味しいね」

リカは今度は昴へとホットケーキを勧めた。昴も、最初は断っていたが、リカの勢いに負けてか苦笑いしてから一口食べた。

「どうだー?どうだーぁ?うまいだろー。にゃはは」

「うん、美味しいよ」

昴は小さく微笑んで、リカの頭を撫でた。

「だろだろ~。何たって、しんじろーとすばるが、リカの為に焼いてくれたんだからな~!んっ、ミルクもうまい!なー、ノコっ!」

そんなリカの言葉に、思わず顔を見合わせる新次郎と昴の二人。そして、何だか嬉しくて、可笑しくて二人は小さく笑い合った、

「なんだ、なんだ~?なんか面白い事でもあったのかぁ?」

二人が笑っている理由が解らずに首を傾げるリカの頭を新次郎は微笑みながら撫でてやる。

「ほら、リカ、口に付いてるよ」

そう言って昴はリカの口を拭ってやる。

「にゃはははは~」

リカはそんな二人に嬉しそうに笑って見せた。

 

「さ、後少し仕事が残ってる。大人しく待っててくれるね?」

ホットケーキを食べ終え、ミルクも飲み終わり一息付くリカに昴が声を掛ける。

「仕方ないな~、早く終わらせろよ~」

リカが頷いた。

それから、食べた後を三人で片付けて仕事場へ戻り新次郎と昴は仕事を再開した。リカも大人しく待つ。

1時間程経った頃だろうか、新次郎が声を上げた。

「終わったぁっ!」

バタリと、机に突っ伏した。

「お疲れ様、大河」

昴も、最後の書類を終わった書類の山に乗せる、

「あの、有難うございましたっ!こんなに早く終わったのも昴さんのおかげです」

そういって新次郎は頭を下げる。

昴は扇を広げて淡く笑う。

「気にする事はない。リカの為だ。さぁ、帰ろうか?彼女は待ちくたびれてしまったようだし」

ゆっくりと立ち上がりながら昴はリカを示した。

「あ……」

新次郎が振り返った先には、待ちくたびれて眠ってしまっているリカの姿。

「ごめん、リカ。帰るよ」

「ん~、お~。かえるぞ~」

返事は返ってくるものの、動き出す気配は無い。

新次郎は軽く笑って、仕方なくリカを背負った。

シアター入り口の戸締まりを確認してから、リカを背負った新次郎と昴は帰り道を歩き出した。

「本当、遅くまでありがとうございました。昴さん」

「別にいいと、さっき言っただろう?」

扇を顎に当てながら、昴が言う。

「そんな事よりも、早くリカを休ませてやれ」

新次郎の背で安らかに眠るリカを僅かに瞳を細めて昴は見た。

「はい」

新次郎は大きく頷く。頷いてから、その振動でリカが目覚めて仕舞わないかちょっと慌てた。

昴はそんな新次郎を見てフフフと笑い、ひょいっと背を伸ばし頬へキスした。

「すすす昴さんっ!?」

リカを背負っているせいで、大きな動揺が出来ない新次郎を他所に、昴は歩いて行ってしまう。

「おやすみ、リカ。おやすみ、新次郎。また、明日」

そういって昴は背を向け去って行った。

真っ赤になった新次郎も、慌てておやすみなさいといって、昴を見送ってから歩き出す。

「しんじろー」

リカがむにゃむにゃと寝言を言った。

新次郎は笑顔を浮かべリカを背負い直す。

「リカ。お泊り、また今度やり直そうね」

そうして新次郎はリカと一緒に家路に着いた。

 

翌日。昴の告げ口でサニーサイドがラチェットに叱られたのは言うまでもない。

 

       

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