「鬼子っこ」
R孫策(鬼)
戦闘のお話
蒼作
R孫策(鬼)
戦闘のお話
蒼作
「鬼子っこ」
ズシャア――
飛び散る血で視界が煙る。
その血の霧の向こうを鋭い眼光でその男は見た。
「ぐはーぁー…」
袈裟懸けに斬り裂いた雑兵が、膝から崩れ落ちて逝くのを見届ければ、口の端を歪めて嗤う。
左の剣を肩に担ぎ上げ、右脚で今倒れた雑兵を踏みにじる。
「おいおい、これで俺の首を取ろうってのか?反吐が出るぜ」
くかかと乾いた嗤いを盛大に零す。
それを見て取り囲んでいた雑兵達が、尻すぼむ。
「来ないなら…こっちから、行くぜ!」
ズドン――
踏み出した脚が地を砕き、爆発的な跳躍が一歩で雑兵達の眼前に届く。
「くははっ!!」
右手の剣が容赦なく目の前の雑兵を斬り捨てれば、左手の剣が別の兵を斬り裂いた。
それだけで動きは止まらず、そこから一歩前へ踏み出し右手を翻せば現状に追いつけない兵士の首を身体から切り離す。
ごろんと落ちた首の先から血の雨が降り注ぐ。そんな中、左手は瞬時に引き戻されそこから更に引き絞られ、解き放たれると、一人の心臓を串刺した。それからまだ血を吹く敵の身体を鬱陶しそうに蹴り飛ばす。
頭の無い死体は、動けないで居た敵兵を二人ほど巻き込んで倒れ落ちる。
それで、目を覚ました兵が顔を青く染めながらも数人が纏まって武器を振り下ろしてくる。
男の顔に獰猛な嗤いが浮かべば、剣を抱きかかえるかの様にしゃがみ込み、一気に伸び上がるように立ち上がる。それだけではなく、右脚を軸に回転を加え己の武器を解き放てば、全ての迫り来る武器をはじき返した。
そして、軸足を変えて逆回転をすれば、がら空きになった雑兵達の胸を深々と斬り裂いた。
周囲に屍が積み重なって行く。
頬を流れ落ちてきた返り血を舐めとり、また男は嗤う。
「さぁ、次は?俺を殺そうって奴は?居ないのかよ、おい!」
きしりと不機嫌に。
銀髪は返り血で赤く染まり、蒼い瞳は猛獣の様に鋭く冷たい。兵達は完全に気圧されていた。其処に居るのは、人ではない。では何だ。
額に血を弾く金の角を見た。
――鬼だ。あれは、人を喰らう鬼だ。鬼だ、鬼だ鬼だオニだおにだ!!
ざわりと一カ所で起きたざわめきと恐怖はじわじわと広がり人を混乱へと引き落とす。
そして、切欠は本当に小さな物から。
「ふっ―あ…あぁあ」
1人が小さな悲鳴を上げて尻餅を着いただけ。
それが、一瞬で周囲に広がり其処は恐怖に支配された。
「う、うああぁあっ!」
「助けてくれえぇっ!!」
「鬼だっ!!鬼があ!」
「死にたくないぃ!!」
蜘蛛の子を散らすように包囲が解け兵士達が散って行く。
「逃がさねぇよ!!」
逃げ出そうとした兵の襟首を掴み、後ろから剣を刺し込んだ。
「あぐああ―っ!」
徐々に力が抜けてぐったりとしたその体を投げ捨てる。
「ちっ、どいつもこいつも」
わたわたと腰を抜かし地面を這う雑兵の側へと歩めば、勢いよく脚を振り下ろし背骨を踏み砕く。血反吐を吐いて転げるその兵を見下せば、今度は腹を蹴り飛ばす。
「ぐぎぎっ」
腹を抱える事も出来ずにのた打ち回る。
そんな兵士から顔を上げれば、此方を睨む幾つかの視線。
「なんだ?此奴が可哀想か?取り戻したいか?じゃあ、掛かって来いよ。どうした?死んじまうぜ?」
かかっ嗤いが零れる。
「う、うっ!うおおっ!」
一人が向かいくれば、それに呼応して数名。向かってくる。
その勇気を勝って、男はもう一度笑い地面を掻いていた兵士の首を、へし折った。
ボギン――
嫌な音を立てて、首の骨が折れればそれを見ていた兵士達が言葉にならない声を上げて、武器を振り下ろしてくる。真正面の雑兵の剣を受け流せば、その剣は後ろから掛かって着ていた別の兵へと突き刺さる。
次の攻撃を弾けば今度も別の兵を。
結果、雑兵達は味方を傷つけ、自らも仲間から傷つけられ膝を付く。
それを待っていたかのように、銀光が走り、血の赤い線が尾を引いた。
ズシャ。屍の山を踏みつけて、見下し嗤う。
「かかっ!弱ぇ、弱ぇよ!」
――ザシュ!
屍の山に剣を突き立てて、踏みにじり、唾を吐く。
冒涜は尚も止まらない。
もう、誰も恐れて振り向かない中で男は鬼の様にまた嗤う。
「ふっは!はーはっはっは!まだだ!まだ足りねぇっ!!その下らねぇ命!俺に喰わせろぁ!!」
剣を引き抜き、屍を踏みつけながら歩き出した。
凶器が狂喜を纏い狂気を撒き散らす。
鬼は次の獲物を求めて闊歩する。
戦場はただの殺戮の場に変わり果てるのか。
知るのは、死せ喰われたモノのみなのかもしれない。
その後、人はその狂気を知らずにその男を小覇王と呼んだ――。
ズシャア――
飛び散る血で視界が煙る。
その血の霧の向こうを鋭い眼光でその男は見た。
「ぐはーぁー…」
袈裟懸けに斬り裂いた雑兵が、膝から崩れ落ちて逝くのを見届ければ、口の端を歪めて嗤う。
左の剣を肩に担ぎ上げ、右脚で今倒れた雑兵を踏みにじる。
「おいおい、これで俺の首を取ろうってのか?反吐が出るぜ」
くかかと乾いた嗤いを盛大に零す。
それを見て取り囲んでいた雑兵達が、尻すぼむ。
「来ないなら…こっちから、行くぜ!」
ズドン――
踏み出した脚が地を砕き、爆発的な跳躍が一歩で雑兵達の眼前に届く。
「くははっ!!」
右手の剣が容赦なく目の前の雑兵を斬り捨てれば、左手の剣が別の兵を斬り裂いた。
それだけで動きは止まらず、そこから一歩前へ踏み出し右手を翻せば現状に追いつけない兵士の首を身体から切り離す。
ごろんと落ちた首の先から血の雨が降り注ぐ。そんな中、左手は瞬時に引き戻されそこから更に引き絞られ、解き放たれると、一人の心臓を串刺した。それからまだ血を吹く敵の身体を鬱陶しそうに蹴り飛ばす。
頭の無い死体は、動けないで居た敵兵を二人ほど巻き込んで倒れ落ちる。
それで、目を覚ました兵が顔を青く染めながらも数人が纏まって武器を振り下ろしてくる。
男の顔に獰猛な嗤いが浮かべば、剣を抱きかかえるかの様にしゃがみ込み、一気に伸び上がるように立ち上がる。それだけではなく、右脚を軸に回転を加え己の武器を解き放てば、全ての迫り来る武器をはじき返した。
そして、軸足を変えて逆回転をすれば、がら空きになった雑兵達の胸を深々と斬り裂いた。
周囲に屍が積み重なって行く。
頬を流れ落ちてきた返り血を舐めとり、また男は嗤う。
「さぁ、次は?俺を殺そうって奴は?居ないのかよ、おい!」
きしりと不機嫌に。
銀髪は返り血で赤く染まり、蒼い瞳は猛獣の様に鋭く冷たい。兵達は完全に気圧されていた。其処に居るのは、人ではない。では何だ。
額に血を弾く金の角を見た。
――鬼だ。あれは、人を喰らう鬼だ。鬼だ、鬼だ鬼だオニだおにだ!!
ざわりと一カ所で起きたざわめきと恐怖はじわじわと広がり人を混乱へと引き落とす。
そして、切欠は本当に小さな物から。
「ふっ―あ…あぁあ」
1人が小さな悲鳴を上げて尻餅を着いただけ。
それが、一瞬で周囲に広がり其処は恐怖に支配された。
「う、うああぁあっ!」
「助けてくれえぇっ!!」
「鬼だっ!!鬼があ!」
「死にたくないぃ!!」
蜘蛛の子を散らすように包囲が解け兵士達が散って行く。
「逃がさねぇよ!!」
逃げ出そうとした兵の襟首を掴み、後ろから剣を刺し込んだ。
「あぐああ―っ!」
徐々に力が抜けてぐったりとしたその体を投げ捨てる。
「ちっ、どいつもこいつも」
わたわたと腰を抜かし地面を這う雑兵の側へと歩めば、勢いよく脚を振り下ろし背骨を踏み砕く。血反吐を吐いて転げるその兵を見下せば、今度は腹を蹴り飛ばす。
「ぐぎぎっ」
腹を抱える事も出来ずにのた打ち回る。
そんな兵士から顔を上げれば、此方を睨む幾つかの視線。
「なんだ?此奴が可哀想か?取り戻したいか?じゃあ、掛かって来いよ。どうした?死んじまうぜ?」
かかっ嗤いが零れる。
「う、うっ!うおおっ!」
一人が向かいくれば、それに呼応して数名。向かってくる。
その勇気を勝って、男はもう一度笑い地面を掻いていた兵士の首を、へし折った。
ボギン――
嫌な音を立てて、首の骨が折れればそれを見ていた兵士達が言葉にならない声を上げて、武器を振り下ろしてくる。真正面の雑兵の剣を受け流せば、その剣は後ろから掛かって着ていた別の兵へと突き刺さる。
次の攻撃を弾けば今度も別の兵を。
結果、雑兵達は味方を傷つけ、自らも仲間から傷つけられ膝を付く。
それを待っていたかのように、銀光が走り、血の赤い線が尾を引いた。
ズシャ。屍の山を踏みつけて、見下し嗤う。
「かかっ!弱ぇ、弱ぇよ!」
――ザシュ!
屍の山に剣を突き立てて、踏みにじり、唾を吐く。
冒涜は尚も止まらない。
もう、誰も恐れて振り向かない中で男は鬼の様にまた嗤う。
「ふっは!はーはっはっは!まだだ!まだ足りねぇっ!!その下らねぇ命!俺に喰わせろぁ!!」
剣を引き抜き、屍を踏みつけながら歩き出した。
凶器が狂喜を纏い狂気を撒き散らす。
鬼は次の獲物を求めて闊歩する。
戦場はただの殺戮の場に変わり果てるのか。
知るのは、死せ喰われたモノのみなのかもしれない。
その後、人はその狂気を知らずにその男を小覇王と呼んだ――。
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