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「紅い調べ‏」
孫策+周瑜

紅葉のお話

大戦NETの書き下ろしのあれ

蒼作

「紅い調べ‏」



コツコツと、規則正しい靴音を響かせて孫策は廊下を歩んでいた。
通り過ぎて行く風は冷たさが混じり、緑だった庭園は紅く色づいている。
そんな庭を視界に収めたとき、あぁもうそんな季節かと今更に思う。
口角があがり、孫策の表情に小さな笑みが浮かんだ。
そんな所へふと耳に届く笛の音。
孫策は脚を止め、笛の音に届く耳を傾ける。
この音は、
「公瑾、か」
笛の音に誘われる様に、孫策の脚は当初の目的とは違う場所へと向いた。
笛の音を追い歩けば、庭の奥の四阿へと辿り着く。
三段程の階段を上った対面の紅く色付いた木に、周瑜が腰を下ろし笛を奏でていた。
孫策は周瑜に声を掛けずに、静かに少し近づき手摺りに凭れて瞳を閉じた。
音が耳に届く。笛の音と風の音が絶妙に重なり合い、酷く耳に心地好かった。
暫く音は続き、静かに止んだ。
風が最後に木の葉を盛大に鳴らして行った。
「……どうした、伯符」
枝に腰を掛けたまま、周瑜は高い位置から孫策を見下ろし声を掛ける。
「いや、何。相変わらずお前の笛の音は心地良いなってな?」
くくっと喉を鳴らして笑う。
「褒めても、何もでんぞ?」
周瑜はまったくと小さく笑って、風に乱された髪をかきあげた。
「ちっ、残念」
とても、言うほど残念そうには見えなかったが、孫策はひょいと肩を竦めておどけて見せた。
それからひらりと手摺りを飛び越え、庭に降りる。
屈んで地面へと手を伸ばしながら何気なく口を開く。
「そうだな、次の軍議の時に一曲頼む」
ひらひらと後ろ手に手を振る。
周瑜は何時の間にか枝から降りて、今度は四阿から孫策を見下ろしていた。
「軍議でか?」
何故と問いながら、何をしているのだろうと周瑜は孫策を眺める。
すると、一枚の綺麗に紅く染まった紅葉を手に孫策は立ち上がり四阿の手摺りに腕を置いてその上に顎を置く。
「知ってるだろうが。古参組の奴らが、ちっと熱くなりすぎてんの」
ひらひらと手に持つ紅葉を揺らす。
「あぁ、お前よりも熱くなってるその所為で、伯符。お前嫌に冷静になってしまってるだろ」
フッと周瑜が可笑しそうに笑う。
それを見てか、自分より熱くなる連中との軍議を思い出してか、孫策は嫌そうに表情を崩す。
「ほんと、勘弁して欲しいぜ。年を考えろってぇの……」
盛大に溜め息を零すが、表情は一転。今は可笑しそうに笑っている。
「で?其処で何で俺が笛を?」当初の問いに戻り、周瑜が首を傾げた。
「ん?だからさ、お前の笛の音でも聞きゃあ落ち着くかと思ってよ」
ニヤリと笑ってしたり顔。
周瑜はと言うと腕を組んで小さく困った顔。
「物は試しだ、やってみてくれよ」
周瑜か反論を口にする前に、孫策はそう言って話を打ち切り背を向け歩き出す。
周瑜は溜め息を吐くが、まったく困った奴だと軽く笑って、
「分かった。だが、何を言われてもお前のせいにするからな」
そう返事を返し、孫策の背を見送る。
それからふと思い、大分離れた孫策の背に最後に声を掛けた。
「それ、どうするんだ?」
それで伝わるかは分からなかったが、まぁ伝わらなかったらそれで良いかと思って居る所に答えが返った。
「大喬にやるっ」
孫策は紅葉を持った手を上げ、ひらりと振ってから邸の中へと姿を消した。
「そう、か」
求めた答えが返って来た事に頷きながら、周瑜も紅葉を小喬に持って帰ってやろうかなと思い、四阿を降りたのだった――。
 

2007.10.31

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