「その叫びは魂の」
新次郎
05[ねぇ。その痛みはやっぱり、くるしいですか?]
黄緑作
その叫びは魂の
ぽたりと、温かい雫が手のひらに落ちた。
「え?」
何だろうと上を見上げても、白い天井しか見えない。
もちろん雨漏りなんてしている訳のない綺麗な天井だ。
何だったんだろうと疑問に思いながら顔を正面に戻すと、またポタリと雫が落ちる。
(なんだろう?)
疑問に首を少しかしげると、視界がゆらりと揺れた。と、思ったと同時にまた一粒。
(もしかして……)
一つの可能性を思い立って自分の頬に指を這わすと、温かく濡れた感触。
それに触れて、ようやく新次郎は泣いていた事に気付いた。
「新次郎、傷の具合は……っ、新次郎?!」
「昴さん……」
泣いていたんだなと、他人事のようにぼんやりと考えていたら、新次郎が目覚めた事をサニーサイドに報告に行っていた昴が戻ってきた。
けれど、自覚してしまったからだろうか。
関を切ったように次から次へと涙が零れてくる。
泣いている新次郎の姿に昴は目を見開くと、急いで新次郎のベッドの下へ駆け寄った。
「どうしたんだ?!傷が痛むのかっ?!」
新次郎は信長の攻撃で生死を彷徨ったばかりなのだ。
部屋に戻ってきて泣いていたら心配するなと言う方が無理がある。
珍しく慌てた昴を見ながら、新次郎は先ほどまで見ていた夢のような現実を思い出す。
顔は何故か思い出せないけれど。
動かない指先、失われていく体温、消えた命の鼓動。
それは、どれも体験してきたようにリアルだった。
それもその筈。全て前世の新次郎が体験した事を思い出したのだから。
「痛い、です。痛いです昴さん……。」
新次郎は俯いて呟きながら、縋るように服の先を掴んだ。
痛いのならば医者を、と言って部屋を出ようとする昴を新次郎は必死に引き止める。
言葉と行動の矛盾に昴は戸惑いながらも、ボロボロと泣く新次郎の傍から離れる事はせず、慰めるようにそっと背を撫でた。
それでも新次郎の涙は止まらない。
「だから、傍にいてください……。」
搾り出すような声は、まるで魂の叫びのようだった。
[ねぇ。その痛みはやっぱり、くるしいですか?]
傷が痛む。
けれど、それ以上に心が痛くて仕方がない。
痛くて、痛くて、引き裂かれそうだ。