「紅く始まり赤く終わって」
新次郎×昴
紅葉のお話
蒼作
新次郎×昴
紅葉のお話
蒼作
「紅く始まり赤く終わって」
「わあ……」
母からの手紙の封筒を開けていた新次郎が、嬉しそうな声を上げた。
「どうしたんだい?新次郎」
其処へ、丁度簡易キッチンの方からお茶を入れた昴がやってくる。
新次郎の部屋だったが、もうかって知ったるもので。
コトリと新次郎の分の湯呑みをテーブルへ置くと、昴は新次郎の対面の席へと腰を下ろし、自分の分のお茶を啜った。
それから、新次郎が窓から入る日の光にかざしていた一枚の紅色に染まった綺麗な紅葉を見やる。
「へぇ、紅葉かい?」
口を付け一口啜った湯呑みを置いて、昴は扇を広げる。
「あっ、ありがとう御座います、昴さん。そうっ、そうなんですよ!紅葉です!綺麗だなぁ」
お茶の礼を律儀に口にしてから、新次郎は手にしていた紅葉を下ろす。
そんな嬉しそうにする新次郎を見て、昴は扇の向こうで小さく微笑んだ。
そうして、パチリと扇を閉じる。
「あぁ、綺麗だね」
そう言って、少し考える仕草。
「もう、そんな季節なんですね。忙しさにかまけて忘れてました」
紅葉を置いて、新次郎は湯呑みに口を付ける。お茶を啜って、美味しいですと微笑んで。
「きっと季節も忘れているだろう君に、母君からのプレゼントだね。素敵な人だ」
そして、新次郎の額を閉じた扇で小突いてやる。
「はい。えへへ」
自分が褒められたかの様に笑う新次郎を見て、昴は満足そうに頷いてから立ち上がった。
「昴さん?」
立ち上がる昴を見ながら、新次郎は小首を傾げる。
「ちょっと席を外すよ。すぐ戻る」
どうしたんですかと、瞳で訴える新次郎に軽く手を振り、昴は部屋の外へと出て行った。
新次郎は不思議に思いつつも、直ぐに戻ると言った昴を疑う事無く大人しく待っていようと、母の手紙に眼を落とした。
少しして部屋へと昴が戻って来た。何やら扇を開いて口元を隠している。
「昴さん?」
新次郎はさっきとは違う方向へと首を傾げた。
すると、昴は扇を下ろして椅子へと腰を下ろしてから口を開く。
「新次郎。これからデートに行かないかい?」
クスクスと笑って見せる昴に、一瞬黙った新次郎は直ぐに嬉しそうに立ち上がった。
「いっ、行きます!ど、何処へ行きましょうですかっ!?」
顔を紅葉の様に紅く染めて、気がせいている新次郎を見て昴は小さく笑う。
「落ち着け、新次郎。もう行き先は決まっている」
そうして、昴は悪戯気に笑うのだった。
「何で此処なんですかぁー」
残念そうに、何処か嫌そうに叫んだのは新次郎。
「フフフ」
扇で口元を隠して笑う昴。
此処は、セントラルパーク内のサニーサイド邸。
此処まで来る道中は、のんびりと歩きウキウキ気分だったのだが。
新次郎は溜め息を吐いた。
「がっかりするのはまだ早いよ。さぁ、行こうか」
ぺちりと閉じた扇で新次郎の肩を叩き、昴はさっさと歩き出す。
「へ?す、昴さぁ~ん」
慌てて昴の後を追い掛けて行く新次郎の目に入ったのは、紅く紅葉した紅葉の木達。
「うわぁ、凄い……」
「だろう?最近は忙しくて此処で食事していなかったからね」
わぁわぁと騒ぐ新次郎を見て昴がクスリと笑う。
そうして、昴は新次郎から目を離し騒ぐ声を聞きながら、紅葉の木へと近付いた。
そっと手を伸ばすと紅葉が落ちてきた。指先が触れる。やんわりと手に取った。自然と笑みが零れる。
ふと、耳に新次郎の騒ぐ声が聞こえなくなっていた。
昴は不思議に思い、新次郎の方へと顔を向けてみれば、其処には顔を真っ赤にして此方を見ている新次郎の姿。
「新次郎?」
首を傾げて新次郎の名を呼んでみる。
すると、はっと気付いたように目を瞬かせてからわたわたとする新次郎。
「なっ!何でもありません!あっ、そうだ!か、勝手に敷地内に入ってサニーさんに怒られませんかね!」
わぁわぁと騒ぐ新次郎に昴はしょうがないヤツだなといった表情を向けてから、
「問題ない。許可は取った」
「あ、そうなんですか?」
きょとーんとした新次郎の隣に昴は立って、
「フッ、抜かりはないよ?折角のデートなのだし…」
スルッと新次郎の腕に自分の腕を絡めると、昴はくすくすと笑った。
新次郎はまた真っ赤になって、硬直して動けなくなり、暫く二人はそのまま紅葉を眺めていた。
2007.11.13
「わあ……」
母からの手紙の封筒を開けていた新次郎が、嬉しそうな声を上げた。
「どうしたんだい?新次郎」
其処へ、丁度簡易キッチンの方からお茶を入れた昴がやってくる。
新次郎の部屋だったが、もうかって知ったるもので。
コトリと新次郎の分の湯呑みをテーブルへ置くと、昴は新次郎の対面の席へと腰を下ろし、自分の分のお茶を啜った。
それから、新次郎が窓から入る日の光にかざしていた一枚の紅色に染まった綺麗な紅葉を見やる。
「へぇ、紅葉かい?」
口を付け一口啜った湯呑みを置いて、昴は扇を広げる。
「あっ、ありがとう御座います、昴さん。そうっ、そうなんですよ!紅葉です!綺麗だなぁ」
お茶の礼を律儀に口にしてから、新次郎は手にしていた紅葉を下ろす。
そんな嬉しそうにする新次郎を見て、昴は扇の向こうで小さく微笑んだ。
そうして、パチリと扇を閉じる。
「あぁ、綺麗だね」
そう言って、少し考える仕草。
「もう、そんな季節なんですね。忙しさにかまけて忘れてました」
紅葉を置いて、新次郎は湯呑みに口を付ける。お茶を啜って、美味しいですと微笑んで。
「きっと季節も忘れているだろう君に、母君からのプレゼントだね。素敵な人だ」
そして、新次郎の額を閉じた扇で小突いてやる。
「はい。えへへ」
自分が褒められたかの様に笑う新次郎を見て、昴は満足そうに頷いてから立ち上がった。
「昴さん?」
立ち上がる昴を見ながら、新次郎は小首を傾げる。
「ちょっと席を外すよ。すぐ戻る」
どうしたんですかと、瞳で訴える新次郎に軽く手を振り、昴は部屋の外へと出て行った。
新次郎は不思議に思いつつも、直ぐに戻ると言った昴を疑う事無く大人しく待っていようと、母の手紙に眼を落とした。
少しして部屋へと昴が戻って来た。何やら扇を開いて口元を隠している。
「昴さん?」
新次郎はさっきとは違う方向へと首を傾げた。
すると、昴は扇を下ろして椅子へと腰を下ろしてから口を開く。
「新次郎。これからデートに行かないかい?」
クスクスと笑って見せる昴に、一瞬黙った新次郎は直ぐに嬉しそうに立ち上がった。
「いっ、行きます!ど、何処へ行きましょうですかっ!?」
顔を紅葉の様に紅く染めて、気がせいている新次郎を見て昴は小さく笑う。
「落ち着け、新次郎。もう行き先は決まっている」
そうして、昴は悪戯気に笑うのだった。
「何で此処なんですかぁー」
残念そうに、何処か嫌そうに叫んだのは新次郎。
「フフフ」
扇で口元を隠して笑う昴。
此処は、セントラルパーク内のサニーサイド邸。
此処まで来る道中は、のんびりと歩きウキウキ気分だったのだが。
新次郎は溜め息を吐いた。
「がっかりするのはまだ早いよ。さぁ、行こうか」
ぺちりと閉じた扇で新次郎の肩を叩き、昴はさっさと歩き出す。
「へ?す、昴さぁ~ん」
慌てて昴の後を追い掛けて行く新次郎の目に入ったのは、紅く紅葉した紅葉の木達。
「うわぁ、凄い……」
「だろう?最近は忙しくて此処で食事していなかったからね」
わぁわぁと騒ぐ新次郎を見て昴がクスリと笑う。
そうして、昴は新次郎から目を離し騒ぐ声を聞きながら、紅葉の木へと近付いた。
そっと手を伸ばすと紅葉が落ちてきた。指先が触れる。やんわりと手に取った。自然と笑みが零れる。
ふと、耳に新次郎の騒ぐ声が聞こえなくなっていた。
昴は不思議に思い、新次郎の方へと顔を向けてみれば、其処には顔を真っ赤にして此方を見ている新次郎の姿。
「新次郎?」
首を傾げて新次郎の名を呼んでみる。
すると、はっと気付いたように目を瞬かせてからわたわたとする新次郎。
「なっ!何でもありません!あっ、そうだ!か、勝手に敷地内に入ってサニーさんに怒られませんかね!」
わぁわぁと騒ぐ新次郎に昴はしょうがないヤツだなといった表情を向けてから、
「問題ない。許可は取った」
「あ、そうなんですか?」
きょとーんとした新次郎の隣に昴は立って、
「フッ、抜かりはないよ?折角のデートなのだし…」
スルッと新次郎の腕に自分の腕を絡めると、昴はくすくすと笑った。
新次郎はまた真っ赤になって、硬直して動けなくなり、暫く二人はそのまま紅葉を眺めていた。
2007.11.13
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