「大人びた子供」
大神+コクリコ
16 [なかしたい。ないてほしい、ぼくだけのために]
黄緑作
大神+コクリコ
16 [なかしたい。ないてほしい、ぼくだけのために]
黄緑作
大人びた子供
動物が好きで、優しくて、大人びていて、明るい。
それが俺がコクリコに対して思い描くイメージだ。
エリカ君を引っ張っていくほどしっかりしているし、頼りになる。
けれど、忘れてはならない。
あの子はまだ幼い子供なのだ。
「イチローの為に、僕頑張るよ!!」
コクリコの光武がステッキを振ると、敵の機体が鈍い音を立てて崩れる。
初戦闘なのに鮮やかな腕前だ。
コクリコは歓声を上げ、敵がもう動かないのを確認してから、次の敵に向かう。
倒れた敵に対して振り返る事も、何の感慨も見せる様子も無い。
それはそうだろう。戦いの最中に敵を哀れむ態度を取れば、そこにつけこまれて自分の身が危うくなる。
分かっては、いるのだけど。
戦闘が終わってから、作戦会議室から出て行くコクリコの姿が見えたので声をかけた。
「コクリコ!………大丈夫、だったか?」
「あ、イチロー!大丈夫だよ。イチローが上手く指揮してくれたし。」
そして、いつもの笑顔。
「そうか……。」
その答えに、彼女が子供ならではの真っ直ぐな正義感と順応性で戦う事に馴染みつつある事を理解した。
こうしてどんどん戦う事に慣れて、いつかは違和感を感じなくなってしまうのだろう。
幼い少女に何かを壊す事。いくら正しい事とはいえ、力で何かを捻じ伏せる事をさせるのは辛い。
心優しい子だと分かっているなら尚更。
だから、無邪気な笑顔がいっそ痛ましい。
泣いてくれたら。辛いと言ってくれるのなら。
慰めてあげる事もできるのに。
[なかしたい。ないてほしい、ぼくだけのために]
戦う事に慣れないで欲しい。
そう願うのは、俺のエゴだと判っているけど。
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