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「好きだなんて言えない」
昴→新次郎

04 [
誰にもいえない、こんなことは。そう、あなたにも]

黄緑作

好きだなんて言えない

 

 

「昴さんには、特別に教えますね。」

新次郎は、内緒話のようにいたずらっぽく話した内容は僕とて驚くものだった。

前世の記憶。出会いと、別れと、戦いで溢れている悲しい物語。

そして………

「そこで命を落とした名も無き少女の顔が…ジェミニと同じだったんです。」

「………なるほど、だから大河はジェミニが犠牲になると言った時にあんなに取り乱したんだな。」

「……はい。」

「何故もっと早く僕に相談しなかった。」

ずっと一人で抱えてきたのだろう。

笑顔の裏に、痛みを隠しながら、ずっと。

「本当は、誰にも言うつもりは無かったんです。誰かに言うには重過ぎることでしたし。」

けれど、やっぱり昴さんは特別ですから。

そう言って彼は切なそうに、照れたように、笑う。

その表情には僕に対する信頼と、ほんの少しの甘えのような感情が滲み出ていた。

 

僕は新次郎にとって特別な存在だ。

誰よりも信頼できる男友達であり、誰よりも親しい女友達でもある。

相談できる良き先輩であり、忠実な部下でもある。

そんな彼の『特別』を独り占めしたような存在。

 

(だけど……)

 

「……………って、あれ?も、もう7時ですか?!わひゃあっ!!ぼ、僕そんなに長く話していました?!どうしよう、遅刻だ!!」

「……これから、ジェミニとデート?」

僕がそう尋ねると、一瞬硬直してから顔を真っ赤にしながらバタバタと手を動かし、結局俯いて小さく頷いた。

「そうか……。」

 

(僕は、彼の恋人という誰よりも特別な存在にはなれなかった。)

 

ずっと新次郎と一緒にいて、いつの間にか新次郎に惹かれていた。

けれど、彼が選んだのは僕ではない。

「あの、ですから僕、そろそろ……。」

………もし君に好きだと言ったら、君はどうするだろうか?

「……分かっているよ。ジェミニをこれ以上待たせたら可哀相だからね。」

「はい。話を聞いてくれて、ありがとうございますっ!」

僕は出来もしない事を夢想して、そんな自分を新次郎に気付かれないように小さく笑った。

(――――――………………なんて、そんな事言える筈も無いけど。)

ジェミニのいる位置が羨ましいと思いながらも、優しいジェミニの事が好きだから。

そして、新次郎との関係を壊したくないから。

僕はただ微笑んで、立ち去る新次郎に「行ってらっしゃい」とだけ告げた。

 

 

 

  [誰にもいえない、こんなことは。そう、あなたにも]

 

君が笑って僕の傍にいてくれるなら、好きだなんて言わない。

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