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「生まれ出た酒の味」
大神×ロベリア

誕生日記念。ワインのお話

蒼作

「生まれ出た酒の味」






月が輝き、街を照らす。
夜の闇は月明かりにその身を僅かに潜めていた。
とある店から男が出てきた。
月を見上げてから、小さく息を吐いて髪を撫でる。

「此処にも無いかぁ。そろそろ街を少し離れないと見つからないかな?」

そんな風に零す男をふと見つけた女が居た。

「ぁん?こんな所で何やってんだ?」

女は、路地裏の闇からするりと抜け出して、夜道を歩き始めた男の背後へと静かに近付く。
あと少しで男に手が届くか。
そんな所で、男がふいに振り向いた。女は内心舌打ちをするが、至って平然と、よぅと声を発する。

「あぁ、やっぱりロベリアか」

男はロベリアの姿をきちんと確認すると笑みを浮かべた。
ロベリアもそれを見て、自然と笑みを浮かべ。

「何だい、よくアタシだって分かったね。隊長」

腕を伸ばし、指先で大神の顎へと触れる。

「分かるさ。ロベリアの気配ならね」

くすぐったかったのか、恥ずかしかったのか、大神はロベリアの指先から逃れる様に身を捩る。
それでも伸ばしてくるロベリアの手を取り、少し指を絡めてからそっと下ろす。

「でもなぁ、夜にひっそりと近付くのは勘弁してくれ。怖いからさ」

珍しく冗談混じりに言ってのける大神にロベリアは瞳を細めた。それからすり寄るように一歩踏み出す。

「ま、覚えてたら。気を付けるさ。所で、あんな店で何やってたのさ?ん?」
そう聞いたとたん、大神の身体が一瞬強張る。しかし、そんな瞬間がなかったかのように大神は笑う。
「な、何の事だい?」

そっとロベリアに触れ、密着していた身体を離す。
何気なくそっぽをむいたりするのだが。
(相変わらず、嘘の付けない男だねぇ)
呆れてそれを指摘してやる気もしない。

「あの店から出て来るの見てたんだけどね」

ぼそっと呟けば、大神はぎくりと。
余りの分かり易い態度。呆れを通り越して可笑しくなった。

「そっ、そうだ!グラン・マに頼まれたんだよ」

はははと笑う顔を見やり、これ以上ツッコむのも可哀相になって肩を竦め。

「ま、そう言う事にしといてやるよ」

ごつりと拳で胸を叩いてからロベリアはスイ―と大神から離れる。
大神は叩かれた胸を押さえて苦悶している。痛く殴ってやったのだ。分かり易い隠し事をする罰だと思えばいいと、ロベリアは鼻で笑う。

「んじゃあな」

そうして、あっさりと手を振りその日はさっさと別れてやった。



数日。
ロベリアは自室のベッドに寝転がっていた。

「まったく、何を隠してるんだかねぇ」

小さく呟いてみても答えは返らない。
大神はまだ何かを隠しているようだ。
グラン・マに何気なく聞いてみたが、何かを頼んだ様子はなかった。
他の連中にも聞いてみたが、知らない様だし、店の奴にも粉を掛けてみたが、しっかりと口止めをしている様でやはり分からない。
いくら真面目に調べていないとはいえ。

「アタシがこうも手こずるとは……」

くくっと喉を震わせ笑った。やはり彼奴には飽きさせられないと。
と、部屋の扉の外に気配を感じてロベリアは体を起こした。
直後、扉がノックされる。

「ロベリア、俺だけど居るかい?」

朝、早い時間。珍しく、あの男が迷惑を考えずにやって来た。別に眠ってもいなかったので、普通に返事を返すと、大神が静かに入ってくる。

「何だい?こんな朝っぱらから」

ベッドから降りて、側にあったイスを引き寄せ座る。


「あぁ、えっと…すまない。ちょっと良い酒が手に入ったから一杯だけ付き合ってほしくて、さ」

どうも、言い訳がましいのを分かっているのか、大神は頭をがしがしと掻いてから、酒瓶をテーブルへ静かに置く。

「朝から、あんたが酒?槍でも降るかね?」

からかってやるが、大神から酒を誘ってくるのは珍しいので、ロベリアはさっさとグラスを用意する。
大神が瓶の口を開けて、グラスに中身の液体を注いだ。
色と香りだけだが、まぁまぁなワインだと思う。
本当に一杯だけの付き合いを望んでいるのか、グラスに一杯だけ注げば大神は瓶の口をしっかりとしめていた。
ふと、ラベルに目がいった。
暫し間を置いて。
(なるほど、そう言う事か……)
事が分かれば、笑いが込み上げてくる。
そんなロベリアに気づき、更にさとられた事を知ったのか、大神は恥ずかしそうに顔を染めた。

「じゃ、頂くよ」

そう言えば、ロベリアは酒を一口喉へと落とす。
それをじっと見ていた大神のネクタイをいきなり掴み、ロベリアは自分の方へと引き寄せた。

「極上な、酒だ、な」

そして、大神の口を塞いだ。
酒瓶のラベルには大神の誕生した年月が記されていた。
そして、今日は奇しくもロベリア・カルリーニの誕生日。
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