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「闇に吠え花を撫で」
孫策


死ぬ間際のお話
※記述通りでは無いところもあります。

蒼作

「闇に吠え花を撫で」




ズキリと心臓が痛んだ。
あまりの激痛にぐらりと傾いだ身体を意地だけで支えた。
どっと流れ出る汗。
ぐっと心臓の上辺りを掴むのだけは無意識で止められなかった。

「伯符?」

周瑜が孫策の異変に気付き振り返った。
しかし、孫策はそれを悟られまいとして、姿勢を正せばニッと笑って何でもないと首を振る。

「自覚は無いんだが、疲れたのかもな」

ハハと精一杯の笑いを零してゆっくりと胸を押さえた腕を自然に下ろした。

「当たり前だ。これだけ大きな戦を収めたのだぞ。疲れていないはずがなかろう。伯符、戻って休め。顔色も悪い」

周瑜が心配気に眉を潜めた。
孫策は笑って周瑜の肩を叩く。

「心配するな、たいしたことはない」

笑って見せた。

ズキリ――

また、心臓が痛んだ。
奥歯を噛み締め痛みに耐えて、決して笑みを無くさないようにする。

「伯符……」

この笑顔でいつまでお前をはぐらかせるのだろうか? 孫策は笑う。

「あぁ、もう分かった。休む、休むさ」

トンと周瑜の胸を叩いてから、脇をすり抜ける。

「じゃ、後は頼んだぜ?」

背を向けたまま歩み去る孫策の背を見つめてから、違和感に胸騒ぎを覚えるも周瑜はやるべき事を成す為に、歩みだす。
孫策は、周瑜を振り返る事無く歩んでいた。
痛む胸を押さえ、脂汗を流し、引き攣った笑みをその顔に張り付けたまま。
都合が良い事に、誰に会う事もなく軍の駐屯地の外れに出れた。



笑って空を見上げる。

「あぁ、俺ももう此処までか………」

誰も居ないそこで、ほっとしたように呟いた。
とうとう膝を付く。
心臓の痛みに、表情を崩し今はじっと耐えた。
荒い呼吸が耳に届く。
きっと、国に帰り着く前にこの命尽きるのだろう。
自分の身体だ、口でごまかしたって何 も変わらない。
あぁ、これから。
これからだと言うのに。
自分が呪わしい。

「………大喬」

お前の顔が見たい。
お前の鈴の音のような声が聞きたい。
お前を抱きしめたい。
出来るの ならば、たくさんの好きと、たくさんの愛を、お前に。
誰か、俺が居なくなった後のあいつを支えてくれ。
頼むから、頼むから。
初めてだ。死ぬのが怖いと思ったのは。
いや、違うか。お前に会えなくなるのが、怖いんだ。

「あぁ、ちくしょうめっ!」

一滴の涙が頬伝った。
それは、痛みの為か、それとも…。

笑った。笑ってやった。

空に吠えて、牙を向けた。

「死ぬか!俺には待ってるヤツが居るんだ!」

痛みを堪えて歩き出す。
国に帰る為に。
妻に会う為に。

この地を統べる為に――。


2007.04

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