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「届いた思いを返せぬままに」
大喬

「届かぬ思いをそれでもキミへ」の大喬編

黄緑作

「届いた思いを返せぬままに」




「―――大喬…」 





「旦那様?」

あの人に呼ばれた気がして振り向いたが、そこにあるのはいつもと変わらぬ屋敷の風景。
空耳だったのだろうか。

(嫌だわ。まだお帰りになるには早いのに。気が急いだのかしら?)

伯符様が暴徒を鎮圧しに行って数日。
帰って来るには些か早過ぎる。
いつ帰って来ても良いように、祝いの酒の用意やご馳走を出せる準備は常にしていたから、気持ちが先走ったのだろうか。
そんな自分を少し笑っていると、廊下からパタパタと足音が聞こえた。

「お姉様~っ!一緒に夕餉にしましょ!!」

入室の許可も求めずに部屋に入ってきたのは妹の小喬。
赤いドレスを翻しながら元気よく入ってきた彼女は、悪びれた様子も無い。
行儀の悪さに嘆息をつき、たしなめようとしたが、目が合った瞬間に妹の無邪気な笑顔が急激に驚いた表情へと変化した。

「どうしたの?お姉様。何かあったの?」

そう尋ねられて首をかしげる。どうしたのかと問いたいのは私の方なのに。

「どうもしていないわよ。小喬こそどうしたの。急に大人しくなって。」
「だって、あの、……その。」

何か言いにくそうに口篭もり、視線を彷徨わせてから、ハンカチを取り出して私の目元をそっとなぞる。

「泣いていたの?お姉様」

泣いていないわ。
そう思いながら頬に指を滑らすと、確かに濡れた感覚がする。


「まぁ。本当だわ。」
「『本当だわ』って………。お姉様、気付いてなかったの?!」

呆れたように驚く妹に頷いて返事を返す。

「だって、思い返してみても悲しい事など無かったのだもの。何故涙が出るのかしら?」
「何故って言われても、お姉様が分からないなら私だって分からないわよ。」

そう、悲しい事など何もない。
ただ、あの人に呼ばれた気がして振り返った。
けれどあの人はいなかった。
それだけの事。
それなのに。

「ねぇ、お姉様。本当に大丈夫?」


何故、涙が止まらないのかしら。


2007.04

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