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「狂おしい程に愛おしく」
孫策×大喬

大人向けのお話

蒼作

「狂おしい程に愛おしく」




まだ、月が昇って間もない時分。
その月の明かりが差し込んでいる室内に、孫策の姿が在った。
独り寝台に腰を下ろし、鎧も脱がずに静かに床を見下ろす。
蒼い瞳が、どこか虚に揺れていた。
耳に届いてくるのは夜の静けさ、と一つの足音。
この部屋方面へと向かって来ているのだ ろうか、徐々にその足音が近付いてそして、ちょうど部屋の前で止まった。
しかし、孫策は耳に届いて居るにも関わらずその足音に興味を示さなかった。
だから、部 屋の戸を叩く音にも優しげなその声音にも返事を返さなかった。

「………伯符様…?」

そっと戸を開き室内を覗き込んだのは彼の妻大喬だった。

明かりの灯らぬ部屋。

疲れて寝ているのかとも思ったが、何故かその時は不信に思って失 礼ながら戸を開いた大喬。
室内へと差し込む月明かりだけを頼りに、部屋内を見回した。
孫策が眠っているだけなのならば、そのまま静かに部屋を後にするつもりだった。
だが、月明かりが見せたのは、寝台に腰を下ろしたままの孫策の姿。

「……伯符、様?」

もう一度声を掛けた。
返事は無い。
大喬は、室内へと踏み入った。
大切な夫の様子がおかしかったから。

そっと寝台へと近寄って、一度躊躇ったその手で孫策へと触れた。
優しく、銀の髪を撫でて。

「…伯符様。どうなさいました?」

それで、やっと孫策は顔を上げた。
虚ろな瞳で大喬を見つめた後、一瞬驚いたように目を見開き、じっと見つめた後髪を撫でる大喬の手を取った。

そして、蒼い瞳で大喬の濃い茶の瞳を見つめればその手の平にキスを落とした。
驚く大喬を他所に、一度唇を離せば辛そうに瞳を閉じて、またキスを。
愛おし気に何度も、啄む様に。

「っ!はっくふ様――!?」

引き戻そうとした手を、孫策は逃がさなかった。
強く握り、舌を這わす。
次第に指を舐めて。

「伯符―様っ!やめっ…!ふぁっ――」

執拗に攻めたてられる。
そして、ガリッと指先を噛られる。

「――痛っ!」

痛みか、それとも、伯符の見た事の反応にか、涙が一筋零れ落ちた。

「―――っ」

血がジワリと滲む大喬の指先を舐めてから、孫策は瞳を開いて、大喬を見遣った。
大喬は小さく身を縮めて震えている。

「っ。泣くな。お前を泣かせたかったわけじゃない…」

震える大喬を見て正気を取り戻した孫策は立ち上がり、そっと大喬の頬を撫で、その一滴の涙がを唇で拭った。

「すまない。大喬」

優しく抱きしめて許しをこう。
そんな孫策の姿は、大喬しか見れないであろう。
大喬は、孫策の胸に顔を埋めふると首を振る。

「ごめんなさい、伯符様。今、貴方を怖いと思ってしまいました……」

ぎゅっと孫策へ抱き着いたが、大喬は夫を恐れた自分を許せずにいた。

「……いいんだ。俺が悪かったんだ」

苦しそうな孫策は瞳を閉じた。

「…っ、どうなさったのです。伯符様」

顔を上げて、大喬は孫策の頬に触れた。
その孫策の頬は冷たく冷え切って居た。
大喬は更に顔を曇らせる。

「…………お前を忘れられない。戦場に居ても、何をしていて も、大喬。お前を忘れられない」

ぎりと、奥歯を噛み締める孫策。その音が、大喬の耳にも届いた。
大喬は驚きを表にして孫策を見つめた。

「戦場では命取りだと、分かっている。なのに、お前を思い出す、触れたくなる、抱きたくなる。どうしたらいい!?俺が駄目になる!けれど、お前を突き放す事も出来ない!」

苦しいほどに大喬を抱きしめた。

足りない。
もっと、もっと。
大喬は微笑んだ。
こんなにも、夫が愛おしく嬉しい。

「ごめんなさい、伯孫様。伯符様がこんなにも苦しんで居るのに、私はうれしくてたまりません」

優しく、大喬は孫符を抱きしめ返す。

「戦場では、私の事など忘れてくれてかまわいと思っているのに、そこで私を思ってくれている伯符様が居る事が」
「大喬……」

孫策が身体を離す。
大喬が微笑みながら、孫策の瞳を見た。
とても、優しい微笑み。

「帰って来たら、狂おしい程に抱いて下さい。キスを下さい。愛の言葉を下さい。

戦場で も私の温もりを忘れられぬ程に。

私は、貴方様を愛しております。この命尽きるまで、貴 方様の御傍に………」

そう言って、大喬は孫策の冷たい唇にキスをした。
温もりを与える様に、愛を確かめるように。

「―――っ」

壊れる程のキスを繰り返し、寝台へと崩れ落ちて。

「――大喬っ。愛してる。お前の為に、俺は生きて帰れるのかもしれない」

そうして、また唇を塞ぐ。
二人は互いを求めて、身を沈める。
月は高く昇り、静かに大地を照らしていた。
寝台で静かに互いの温もりを感じていた。
大喬が、ふと目を覚まし孫策を見遣り。
微笑んだ。
それから指先を見た。
孫策に噛られた跡が残って居る。
それが愛しかった。
そして、その指先に口付けを。
それから、悪戯気に微笑んでから、眠る孫策の首筋へ顔を埋めた。

「―――っん」

孫策が身じろいだ。
大喬が身を離し、孫策が起きなかった事を確認すると、くすくすと笑って孫策の腕の中へと戻り目を閉じた。

孫策の首筋にうっすらと花が咲いた。



2007.04 蒼
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