「届かぬ思いをそれでもキミへ」
孫策
死ぬ間際のお話
蒼作
孫策
死ぬ間際のお話
蒼作
「届かぬ思いをそれでもキミへ」
その時、動けなくなった。
何かに捕われたかの様に脚が、腕が、動かない。
そして、足元からじわりじわりと絡み付くように昇り来る気配 があった。
黒い陰が視界を覆う。
それから溢れ出てくるのはどろどろとした醜い感情。
俺に殺された者達の叫び。
「うっ……あ……――」
ノロノロとやっと動いた腕は、意味も無く空を掴む。
退け!やめろ!離せ!消えろ! 俺はまだ、死ねないんだっ。
引き倒される身体。
突然濃くなった土の匂いに軽くむせた。
地の底に引きずり込まれて行く。
抵抗も無意味だった。
徐々に消えて行く思い、感情、自我。
消え行く最期に残せた言葉は――。
「――大喬…」
俺をアイツが待って居るのに。
そして、俺の世界は闇に呑まれた。
2007.04
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